D1とD2、身体の二つの動きの層を理解する
この記事を書いた人
高田 一壽
たかだ かずひさ
- 役職
- PNFCメソッド 開発者
株式会社ピーエヌエフシーテック 代表 - 臨床歴
- 30年以上
- 施術実績
- 月間200名以上
- 教育
- 療術学院・競輪学校等の講師も実施経験
- 指導実績
- 全国の障害者施設・高齢者施設・スポーツ団体
- メディア
- 大手企業TVCM出演、各種スポーツ団体との契約指導
長年の現場経験から体系化されたPNFCは、「鍛える」のではなく 「本来の機能を取り戻す」 コンディショニング法として確立されました。
D1とD2、身体の二つの動きの層を理解する
同じ側で荷物を持ち続けてきた、その年数が見えてくる
荷物はいつも右肩にかける。改札を通るとき、右腕が自然に前に出る。振り向くとき、上半身ではなく首だけが動く。これは、ごく最近気づいたことでも、身体が壊れ始めているわけでもないんです。
対角パターンが少しずつ使われなくなってきた結果です。3年かけて積み上がったズレが、ある日の朝に「右だけ振り向きにくい」という形で現れてくる。その日が最初の日ではなく、3年分の最後の日なんですよね。
歩くとき、足音が重いと感じる方がいます。膝から下をどすどすと地面に落としている。自分では「歩き方を意識したことがない」とおっしゃる。でもその歩き方は、身体が対角線の動きを忘れていることを、足音で教えてくれているんです。
右足を前に出すとき、左腕が自然に前に振れる。これが正常な対角パターンです。ところが腕が振れなくなると、足音が重くなる。腕と足が対角線で連動していないから、足だけで歩いている。
PNFCの臨床現場で、月間200名以上の身体を見ていると、気づくことがあります。
動きがぎこちない方のほとんどは、筋力が不足しているのではなく、対角パターンが偏っているんです。右側は動くけれど左側は止まっている。上肢は使えているけれど、下肢への連動が切れている。その偏りが、あちこちの不調として積み重なってくる…。
人間の身体には、二つの対角パターンがあります。D1(Diagonal 1)とD2(Diagonal 2)。この二層の動きが連動して初めて、歩く・回す・持つという日常の動作が成り立つ。
片側だけで荷物を持ち続けてきた、その年数は、ご自身の対角パターンの偏りの年数でもあります。
対角パターンが崩れている人は、運動不足ではない
身体が重い。動きがぎこちない。こう訴えると「筋力不足ですね、筋トレをしましょう」と言われることが多いです。
ここで一度、立ち止まって考えてみてください。
対角パターンが崩れている人は、筋力が足りないのではありません。片側回転の蓄積で、身体の前後左右が別々の時刻で動いているんです。
どういうことか。筋トレのほとんどは「直線の動き」です。腕立て伏せは真上に押す。スクワットは真下に沈む。この動き方は、日常で実際に使う場面がどれだけあるでしょうか?
靴を履くとき、身体は斜め前にねじれています。掃除機をかけるとき、押しながら胴体がひねれる。車のシートに座ったまま後ろの荷物を取るとき、身体の前後左右が別々に動いている。
日常の動きのほとんどは、対角線です。
身体は斜めに動くようにできている…
ムービングストレッチ(MVS)は、PNFCの原理をベースにした動きの体系です。ここで使われるD1とD2は、PNF(固有受容性神経筋促通法)における二つの対角パターンのことです。身体の神経と筋肉が、対角線の経路で連動していることを利用した、動きながら行うコンディショニング法です。
PNFCの臨床では、こんな場面を繰り返し見てきました。
長年ウォーキングを続けているのに膝が痛い。週に数回ジムに行っているのに腰が改善しない。その方たちの共通点は、対角パターンを使わずに動いていることなんです。直線的に足を出し、直線的に腕を動かし、胴体はほとんど固まったまま。それを何千歩、何万歩と繰り返してきた。
取り戻すべきは筋力ではありません。身体が生まれながらに持っている、斜めに動く層です。
対角パターンは、一人で整えるのが難しい
ここで少し正直にお伝えしたいことがあります。
対角パターンのズレは、自分ではなかなか気づけません。片側回転が3年積み重なっていても、本人には「そういう動き方だ」としか感じられないからです。右でしか荷物を持たない習慣は、無意識に刷り込まれているので、意識的に変えようとしても、ほとんどの場合は元に戻る。
さらに、D1とD2のどちらが弱っているか、上肢と下肢のどちらの連動が切れているか。これは外から身体を見ないと判断できない情報です。
自分の動きを自分で観察するのは、川の水が自分自身の流れを見るようなもので、構造上ほぼ不可能です。観察する主体と観察される対象が同じ身体ですから、見えない部分がどうしても出てくる。
もう一つ。対角パターンを取り戻すには、順番があります。まず深層から呼吸を整えて、関節をほどいてから、対角の連動を回していく。この順番を間違えると、やっても変わらない、あるいはかえって負担になることがある。
「何から始めるか」「どの対角パターンを先に扱うか」の判断が、ご自分だけでは揃えにくいんですよね。
心細く感じるとしたら、その感覚は正直なものだと思います。
それでも、対角パターンが戻ったときの変化は、とても分かりやすいものです。
朝、布団の中で背伸びをするとき。右手を左上に、左足を右下へ対角線に伸ばした瞬間、身体の中心からぐっと広がる感覚が出てくる。それが、対角パターンが動いた合図です。
振り向くとき、首だけでなく胴体全体がついてくる。買い物袋を持ち上げるとき、身体全体がひとつの流れで動く。足音が軽くなる。
「何か特別なことをしたわけじゃないのに、身体が軽い」。これが、対角パターンが本来の状態に戻ったときに現れる感覚です。
この対角パターンの構造と、失われた後に何が起きているか。ここから先で順番に辿っていきます。
ここから先で扱うこと
対角パターンの原理は、知っているだけで日常の動き方が変わります。有料パートでは以下を順番に辿ります。
FOR / この記事が向いている方
向いている方
- ✓同じ側ばかりで荷物を持つ、振り向くとき首だけが回ると気づいている
- ✓歩くと足音が重い、腕が振れていないと感じる
- ✓筋トレを続けても身体の重さが変わらず、理由が分からない
- ✓対角パターンの原理から、ご自分の身体を読み直したい
- ✓肘や膝を回すとどう変わるか、その仕組みを知りたい
今は別の道が合う方
- —整形外科での治療を今まさに受けていて、安静が必要な状態にある
- —筋力をつけることそのものが目的で、それで充分整っている
- —知識より先に、すぐ使えるメニューだけが欲しい
PREVIEW / ここから先で扱うこと
- ●D1とD2、二つの対角線がどんな経路で身体を走っているか
- ●対角パターンが崩れたとき、腰・肩・呼吸に何が起きているか
- ●なぜ回旋の動きが直線運動より関節と内臓に届くか
- ●季節と腎の関係が、冬に身体が閉じる理由とどう繋がるか
- ●ご自身の対角パターンの状態を読む、五段階のセルフ見立て
Q&A / 読みはじめる前に
Q. 激しい運動が苦手でも、取り組めますか?
取り組めます。対角パターンを取り戻すのに、激しい動きは必要ありません。肘や膝をゆっくり回す、お尻の骨で静かに歩く。そういった小さな動きがベースです。本来の動きを思い出す過程ですから、最初から頑張らなくていいんです。
Q. 長年の癖や習慣は、変わりますか?
身体は何歳からでも応えてくれます。30年以上の現場で、いちばん早く変化に気づくのは、むしろ長く同じ癖を持ち続けてきた方々でした。癖が深い分、対角パターンが戻ったときの変化も分かりやすい。
Q. どこから始めればいいか分からない場合は?
有料パートに「ご自身の対角パターンの状態を読む見立て」を用意しています。今の状態がどの段階にあるかを確認してから、順番に辿っていく構成です。何から始めるべきかは、本文がそのまま案内してくれます。
ここから先に、もう一段深い話があります。
この続きは有料パート
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