足の親指から唇まで、脾経の一本道
この記事を書いた人
高田 一壽
たかだ かずひさ
- 役職
- PNFCメソッド 開発者
株式会社ピーエヌエフシーテック 代表 - 臨床歴
- 30年以上
- 施術実績
- 月間200名以上
- 教育
- 療術学院・競輪学校等の講師も実施経験
- 指導実績
- 全国の障害者施設・高齢者施設・スポーツ団体
- メディア
- 大手企業TVCM出演、各種スポーツ団体との契約指導
長年の現場経験から体系化されたPNFCは、「鍛える」のではなく 「本来の機能を取り戻す」 コンディショニング法として確立されました。
筋骨格と経絡のつながりについては、別の記事でゆっくり扱っています。
≫ 筋骨格 入門 ― 関節から身体を読む
足の親指から唇まで、脾経の一本道
リップクリームを3本目に開けた朝のこと
リップクリームを3本目に開けながら、これで何本目だったかと数えるのを諦めた朝がある。そんな朝が、3週間続いていた。布団から出る前から、すでに重い。
唇はまた荒れていた。朝の洗顔のあとにひび割れが始まり、夕方には血がにじむ。塗るたびに少し楽になって、翌朝には元に戻る。その繰り返し。
同じ時期、食後にお腹が張るようになっていた。胃もたれとまではいかないけれど、消化がなんとなくもたつく。食べたものが、上から下へきちんと降りていかない感じ。
そして夕方になると、靴を脱ぐのが少し面倒になっていた。足が膨らんでいる。朝の感覚より、少し別の身体になっている。その別物感を、いつから当たり前として受け入れていたか。
足の親指。お腹の張り。唇の荒れ。こんな朝が続くのは、なぜなのか。
バラバラに見えるこの三つが、一本の道でつながっています。
胃薬は胃だけに届く、でも道は道全体
お腹の調子が悪いとき、大抵は胃薬を飲みます。消化を助ける薬、胃酸を抑える薬。確かに、一時的には楽になる。
でも、またしばらくすると同じ重さが戻ってくる。「これは体質なんですね」と言われて、納得したような、していないような、その中間で数年が過ぎる。
現場でいちばん惜しいと感じる瞬間が、ここです。「これは歳のせいですね」「体質なので仕方ありません」と片付けられるとき。道が詰まっているだけなのに、道のことを誰も見ていない。本質は上流にある脾の問題なのに、下流の症状だけ見ている。これが変われない理由です。
東洋医学には「経絡」という考え方があります。臓器と身体の表面をつなぐ、気の通り道です。
脾の経絡は、足の親指の内側から始まります。そこから内くるぶし、ふくらはぎの内側、太ももの内側を上がっていく。お腹に入り、脾と胃を通って、最後は舌と唇に届く。
要は、一本の道です。
三つが、一本の道にある
この道のどこかで気の流れが滞ると、そこから先に影響が出ます。胃薬は胃だけに働く。リップクリームは唇だけに届く。でも道の問題は、道全体を見ないと解けない。
足の親指の鈍さは、道の入り口で何かが詰まり始めたサインです。
道が通っている人の身体
脾経がちゃんと通っている人は、食後が軽い。食べたものがすっと下に降りていく感覚がある。お腹に余計な重さが残らない。
唇に自然な血色がある。冬でもリップクリームにほとんど頼らなくて済む。
足の親指で地面をしっかり踏める。立ったときの安定感が違う。重い荷物を持って帰っても、ふらつかない。それは筋力の問題ではなくて、身体の中の「通り」の問題です。
朝、靴下を履くとき、足の親指にきちんと力が入る。夕方になっても、足がほとんど膨らんでいない。その感覚を、「昔は当たり前だったのに」と思い出せるくらいには、誰もが一度は持っていたものです。
食後の一時間が、重くない。消化がもたつかない。そのかわり、食べたものが身体の奥で静かに変換されていく感じがある。その変換の感覚を、東洋医学では「運化」と呼びます。脾が担っている、最も根本的な働きです。
この働きが滞るとき、季節が大きく関係しています。梅雨から晩夏にかけて、空気中の湿度が上がります。この時期、現場では胃腸の不調が一気に増えることが、毎年確認されます。湿が多い環境は、脾の運化を鈍らせる。脾の通りが悪くなると、水分が身体の中で処理しきれず、むくみとして末端に溜まっていく。唇はさらに乾く。この連鎖が、梅雨入りの前後から静かに始まっています。
では、この道はどうすれば通るようになるのか。
整え方には、4つの条件が同時に揃わなければなりません。
まず、脾経という道の全体像を把握すること(足から唇まで、どこがどう続いているか)。次に、上流から順番に手をつけること(下流だけ見ていても繰り返す)。そして、季節の影響を踏まえること(梅雨から晩夏は脾が最も弱りやすい時期です)。最後に、動きで通す際の回旋パターンの選択(直線ではなく対角の動きでないと、この経絡には届かない)。
この4条件が同時に揃わなければ、一本の道は通りません。ご自分で順番を組み立てるのは、けっこう心細い作業です。
踏み込んだ言い方ですが、30年以上の現場で、この順番を崩して効果が続いた例を、ほとんど見ていません。それを承知で書いています。
ここから先で扱うこと
有料パートでは、脾経という一本の道を起点から終点までたどりながら、身体の中で何が起きているかを読み解きます。
- 脾経の走行に沿った症状の連鎖構造(足→脚→腹→口唇)
- 消化力の低下が、美容・体力・精神にどう波及するか
- なぜ梅雨と晩夏に脾の不調が悪化するのか(五行と季節の対応)
- 脾を助ける食材と、避けたい食べ方
- なぜ回旋の動きが脾経を通すのか
- ご自分で脾の状態を読むためのセルフ見立てガイド
脾経の連鎖と季節養生プロトコル。
FOR / この記事が向いている人
向いている方
- ✓症状の表面ではなく、その三段下にある根に手をつけたい
- ✓入門記事だけでは物足りなくなった
- ✓連鎖の構造そのものを理解したい
- ✓自分の身体を読む地図を持ちたい
- ✓一度学んで、ご自分で整え続ける力を持ちたい
今は別の道が合う方
- —対症療法だけで、充分整っている
- —短い情報だけで答えを得たい
- —受け身で改善を待ちたい
PREVIEW / ここから先で扱うこと
- ●見えている症状の三段下に流れている、根の構造
- ●上流から下流へ、三段階で進む連鎖の進行
- ●季節と五臓のリズムが、現在の症状に与える影響
- ●食・動き・呼吸で根に手をつける順番
- ●自分の連鎖の段階を読む地図が、手に入る
Q&A / 読みはじめる前に
Q. 運動が苦手でも、続けられますか?
続けられます。鍛えることが前提ではなく、本来の動きを思い出すことが前提です。激しい運動は出てきません。日常の合間にご自身で取り入れられる範囲で組まれています。
Q. 年齢的に、もう変化は起きにくいのではと感じています
身体は何歳からでも応えてくれます。30年以上の現場で、いちばん早く変化に気づくのは、むしろ長く諦めてきた方々でした。年齢は理由になりません。
Q. 読んだあと、すぐに変化を感じられますか?
早い方は読んだその日のうちに、身体のどこかが軽くなるのを感じます。順番の通りにご自身で辿っていただければ、応えてくれる方が多いです。
この続きは有料パート
脾経の連鎖と季節養生プロトコル
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