季節養生

春は肝臓の季節。イライラの正体

KAZU@FURYU
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この記事を書いた人

高田一壽

高田 一壽

たかだ かずひさ

役職
PNFCメソッド 開発者
株式会社ピーエヌエフシーテック 代表
臨床歴
30年以上
施術実績
月間200名以上
教育
療術学院・競輪学校等の講師も実施経験
指導実績
全国の障害者施設・高齢者施設・スポーツ団体
メディア
大手企業TVCM出演、各種スポーツ団体との契約指導

長年の現場経験から体系化されたPNFCは、「鍛える」のではなく 「本来の機能を取り戻す」 コンディショニング法として確立されました。

春になると、なぜかイライラする

朝の洗面所。
家族が食器を出す音で、ビクッとした。
別に怒られたわけでも、何かあったわけでもない。
ただ音が引っかかった。
そのとき、鏡の中の自分に少し信用が減った。


窓を開けたら、風が少しぬるい。
春が来たはずなのに、気分はどんより。


頭がぼんやりして、すっきりしない。
やらなきゃいけないことは分かっているのに、
身体が動いてくれない。


春分が近づくこの時期、
そんな感覚を抱えている方は少なくありません。


「ストレスが溜まっているのかな」
「更年期のせいかな」
「自分の性格の問題かも」


そう考えて、自分を責めてしまう方もいます。


でも、このイライラには、
身体の側からの理由があります。


毎年、同じ時期に同じ感覚が来るなら、
それは性格の問題ではありません。
季節と身体の間で起きていることです。



イライラの正体は、性格ではなく「肝」にある

東洋医学の五行という考え方があります。
春は「木」の季節。


木に対応する臓器が「肝」です。


「肝」は西洋医学の肝臓とは少し違います。
気の流れをスムーズに巡らせる働き。
感情の安定にも深く関わっています。


チョコレートに手が伸びそうになって、
引っ込めた。
あれ、甘いもの食べたいのって
気のせいじゃなかったんだ。


春になると、肝の気が上昇し始めます。
冬の間に蓄えたエネルギーが動き出す。
この上昇がスムーズにいかないと、
気が詰まります。


気が詰まると、感情があふれます。
イライラ、焦燥感、怒りっぽさ。


多くの方は「ストレスを減らそう」とします。
それ自体は間違いではありません。


ただ、順番がもっと手前にある。
肝の気がスムーズに流れる状態を
取り戻すことが先です。


肝の気が詰まる
感情があふれる
イライラ・不眠

…でも、本当にこれだけ?



* * *

季節の不調を、PNFCはこう見ている

第1層 表に現れている症状 季節の変わり目の不調 / だるさ / 風邪をひきやすい / 気分の波 / 古傷の疼き — ここを揉んでも、しばらくすると戻ってくる この奥に 第2層 巡りと呼吸の停滞 血の流れが鈍る / 水の巡りが滞る / 呼吸が浅くなる / 自律神経の揺れ — 第1層の症状を作り出している、ひとつ手前の流れ さらに奥に 第3層 / 根 五臓の循環と季節のリズム 前の季節の過ごし方 / 五臓の連鎖 / 使われ方のズレ / 深層の眠り — ここに手がつくと、上の二層が一緒にほどけはじめる

肝の気が巡ると、朝が変わる

肝の気がスムーズに流れ始めると、
身体の中が静かになります。


朝、布団から出た瞬間。
あれ、今日はすっきり目が覚めた。


家族の言葉を、穏やかに聞ける。
頭の霧が晴れて、やるべきことに手が伸びる。
スーパーでカゴに入れたチョコレートを、
なんとなく棚に戻せた。


なぜ、そうなれるのか。


実は、春のイライラには
いくつもの要因が絡んでいます。
肝の気だけでは説明がつきません。


冬の間に腎がどれだけ蓄えられたか。
気温差に自律神経がどう反応しているか。
食べているもの、首の状態、呼吸の深さ。


ひとつの臓器だけで解決できる話ではありません。
しかし、全体像が見えると、
やるべきことは驚くほどシンプルになります。



FOR / この記事が向いている人

向いている方

  • 毎年同じ季節に、同じ不調が出る繰り返しに気づいている
  • 季節の変わり目に身体が崩れやすい
  • 一年のリズムで、身体を整えたい
  • 民間療法ではなく、原理を知って実践したい
  • 五行や東洋医学の知恵を、現代の生活に活かしたい

今は別の道が合う方

  • 季節の変わり目を、すでに穏やかに過ごせている
  • 季節とは無関係の症状に集中したい
  • 短期決着型の対処を求めている

PREVIEW / ここから先で扱うこと

  • 前の季節の過ごし方が、今の不調を作っている五行の構造
  • 季節ごとに優先順位が変わる、五臓の整え方
  • 季節の変わり目に出やすい不調と、その手前の養生
  • 一年のリズムで身体を整える、養生の年間カレンダー
  • 自分の季節リズムを、五臓の声から自分で読めるようになる

Q&A / 読みはじめる前に

Q. 運動が苦手でも、続けられますか?

続けられます。鍛えることが前提ではなく、本来の動きを思い出すことが前提です。激しい運動は出てきません。日常の合間に取り入れられる範囲で組まれています。

Q. 毎年繰り返しているのに、もう変われないのではと思っています。

身体は何歳からでも応えてくれます。30年以上の現場で、いちばん早く変化に気づくのは、むしろ長く諦めてきた方々でした。繰り返してきた、ということは身体が毎年同じサインを出しているということ。そのサインを読み始めると、連鎖は動き出します。

Q. 読んだあと、すぐに変化を感じられますか?

早い方は読んだその日のうちに、身体のどこかが軽くなるのを感じます。順番の通りに辿っていただければ、応えてくれる方が多いです。

ここから先に、もう一段深い話があります。

冬の「腎」から春の「肝」へ

冬の間、身体の主役は腎でした。
エネルギーを内側に蓄え、
身体を閉じて寒さをしのぐ季節です。


五行の考え方では、腎は「水」に対応します。
水とは、ここではリンパ液のような
身体を潤す液体のこと。
腎がこの水を全身に分配しています。


冬場に寒さで身体が縮こまると、
腎が硬くなります。
硬くなれば、水の分配がうまくいかなくなる。


まあ、冬にお湯をあまり飲まなかった方は
この時点ですでに水が足りていない、
ということなんですよね。


春になると、身体は「水」から「血」へ
切り替わろうとします。
腎が蓄えた水を材料にして、
肝が血を巡らせ始める。


この切り替えがうまくいかないと、
血の巡りが滞ります。
女性はとくに、この時期に血の動きが
悪くなりやすい。
PNFCの臨床現場でも、春先の女性が
この詰まりで来られるケースは多いです。


あれ、去年はこんなに眠くなかったのに。
なんだか、いくら寝ても足りない。


血の巡りが悪くなると、
肝の気がスムーズに上昇できません。
気が上に行きすぎれば頭がぼんやりする。
巡らなければ胃腸が重くなる。
あふれれば感情が揺れる。


しかも、外からの影響も重なります。
花粉、気温差、春風が運ぶさまざまなもの。


首の骨の7番目のあたり。
ここが外からの影響の入り口になります。
寒さで縮こまった首まわりが硬くなると、
身体を守るバリアが弱くなる。
粘膜が乾き、咳が出て、目がしょぼしょぼする。


連鎖を整理します。


STEP 1
冬の腎が硬くなる
STEP 2
水の分配が滞る
STEP 3
水→血の切り替えが停滞
STEP 4
肝の気が詰まる
イライラ・頭重・甘いもの欲求


ここが一番大事です。
春のイライラは、春だけの問題ではありません。
冬の腎の状態がすでに伏線になっています。


だから、イライラを抑えようとしても戻る。
表面だけ触っても、上流が変わっていないからです。



* * *

季節の悪循環

前の季節を整え損なう

五臓が応え損なう

次の季節へ持ち越す

不調が出る

↻ どこか一点を変えると、ループ全体がほどけはじめます。

イライラだけでは終わらない

爪を切るとき、ふと気づく。
縦筋が増えている気がする。


肝の気が詰まった状態が続くと、
イライラだけでは終わりません。
五行では、肝のラインに
「目」「筋」「爪」「怒」が並んでいます。


目がしょぼしょぼする。
関節がこわばる。爪にスジが入る。
一見バラバラに見えるこれらは、
同じ「木」のライン上にあります。


肝は「腱」を作る臓器でもあります。
腱とは、関節をまたぐ組織のこと。
肝の働きが落ちると腱が硬くなるので、
春先に関節が痛む方が増えるのは
こういう仕組みですよね。


ROOT CAUSE
肝の気の停滞
血の巡りの低下 イライラ・怒り
腱・筋の硬化 関節痛・こわばり
目への影響 かすみ・疲れ目
爪の栄養不足 縦筋・割れ
胃腸の停滞 食欲不振・甘味欲求


血の巡りが悪くなると、
甘いものが欲しくなります。
脳がエネルギーを求めるから。


でも甘いものを食べると、
余計に胃腸に負担がかかる。
そうすると脾臓の働きが落ちて、
さらに気の巡りが悪くなる。


仕事帰り、コンビニでチョコを買って
車の中で食べた。
少し楽になった気がしたのに、
翌朝はもっとだるい。


悪循環に入ってしまうと、
ひとつの臓器だけ見ても抜け出せません。
全体のつながりを知ることが、
抜け出す第一歩になります。



五行の地図で見る、春の身体

「整骨院で『最近どうですか?』と聞かれて、
全部です、としか答えられなかった。」


春に出てくる不調は多岐にわたります。
でも、五行の対応表を見ると
バラバラだった症状に地図が現れます。


五行と季節の対応
季節 五行 感情
晩夏


春の行に「怒」があります。
イライラや焦燥感は、
肝の気が詰まったときの自然な反応です。


冬は「腎」の季節で、「恐」。
冬に不安感が強くなる方がいるのは、
腎の気が弱っているサインです。


そして注目したいのは、
冬(腎)→ 春(肝)の切り替わり。
五行では「水が木を育てる」関係にあります。
腎が蓄えた水が、肝の血の材料になる。


要は、冬にどれだけ腎を養生したかが
春の肝の状態を左右するということです。


春が来てからイライラをなんとかしようとしても、
上流が冬にある以上、
今からできることと来年に向けた準備の
両方が見えてきますよね。



* * *

前の季節の過ごし方が、次の季節の身体をつくる

春 木 / 肝 芽吹き・巡り 夏 火 / 心 発散・喜び 晩夏 土 / 脾 受け入れ・消化 秋 金 / 肺 手放し・潤い 冬 水 / 腎 蓄え・休息 めぐる順序 春の肝が動き 夏の心へ送られる 晩夏の脾が受けとめ 秋の肺が手放し 冬の腎に蓄えられる 陰陽五行の相生図 / 風流PNFC 作図

食卓から始める、肝の養生

夕飯の支度をしながら、
冷蔵庫を開ける。
何を作ろうか、考える気力がない。


そんな日こそ、シンプルでいい。
ただし「何を入れるか」を少し変えてみてください。


五行の対応表で、春=肝の味は「酸」でした。
酸味は肝の気を助けます。


  • 酸味を一品加える。
    梅干し、柑橘類、酢の物。甘いものに手が伸びそうなとき、酸味を先に口にしてみてください
  • セロリを酢に漬ける。
    1日漬けてそのまま食べる。セロリは肝と腎の両方に良いとされています。これは養生の部屋でも繰り返し話されてきた定番です
  • お米をしっかり食べる。
    気を巡らせるには、胃腸に負担の少ないエネルギー源が要ります。お米はゆっくり消化されるので、小腸に少しずつエネルギーが届きます。パンや麺よりも、お米
  • 粘膜を守る食材を取る。
    山芋、里芋、レンコン。ネバネバ系の白い食材は粘膜を潤します。春風に粘膜がやられやすいこの時期、意識して取りたいところです
  • 油物を控える。
    春は肝と胆のう、つまり油を分解する臓器の季節。ここに負荷をかけすぎると回復が遅れます。揚げ物やお菓子の油は控えめに


食材
はたらき
臓器
梅・柑橘類
肝気の巡りを助ける
お米
気の土台をつくる
山芋・レンコン
粘膜を潤す

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概念図・PNFC独自の見立て

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PNFC TEC JAPAN 会長
30年以上にわたり、月200名を超える人々の身体と向き合ってきた、日本でも稀有なコンディショニングのスペシャリストである。 東京療術学院で講師として専門家育成に携わり、全国の障害者施設・高齢者施設・スポーツ団体での指導を通じて、幅広い臨床経験を培ってきた。 大手企業のTVCM出演、各種スポーツ団体との契約指導、全国から寄せられる多数のセミナー依頼など、多方面で活動実績を積み重ねている。 その長年の現場経験から体系化されたPNFCは、運動能力の改善と身体の再構築を可能にするメソッドとして確立され、現在も全国からの依頼が絶えることはない。
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