肩こりの原点は肩にない
この記事を書いた人
高田 一壽
たかだ かずひさ
- 役職
- PNFCメソッド 開発者
株式会社ピーエヌエフシーテック 代表 - 臨床歴
- 30年以上
- 施術実績
- 月間200名以上
- 教育
- 療術学院・競輪学校等の講師も実施経験
- 指導実績
- 全国の障害者施設・高齢者施設・スポーツ団体
- メディア
- 大手企業TVCM出演、各種スポーツ団体との契約指導
長年の現場経験から体系化されたPNFCは、「鍛える」のではなく 「本来の機能を取り戻す」 コンディショニング法として確立されました。
肩こりの原点は肩にない
仕事が終わった夕方、肩が重くなる。
後ろへ手を回そうとすると、付け根で引っかかる。
いつからこうなったんだろうと思いながら、また首を左右に傾ける。
肩を回してみる。ゴリゴリと音がする。
整体へ行くと「かなり凝ってますね」と言われる。
施術の後は少し楽になる。
翌朝には、また同じ重さが戻っている。
それが何年も続いている…。
朝、鏡の前でブラウスのボタンを留めようとして、腕が後ろに回らなかったとき。
「歳のせいだろうか」と思ったとき。
そのたびに、自分の身体への信用がひとつずつ減っていく感覚があります。
・ 肩を揉んでも、翌日には元に戻る
・ 首を回すと、ゴリゴリ鳴る
・ 腕を上げると、肩の付け根が詰まる感じがする
・ 深呼吸しようとしても、胸が開かない
PNFCの現場では、月間200名以上の方の身体に向き合ってきました。
肩こりで来院される方の多くが、整体・接骨院・マッサージを何年も続けているんです。
そして同じ言葉を繰り返す。「また戻りました」と。
洗面所の鏡の中で、腕が上がりきらない朝が繰り返されていませんか。
着替えのたびに、ちょっとした引っかかりを感じて、身体への信用がひとつずつ減っていく感覚。
こんな朝が続いているとしたら、その感覚がこの記事を読んでいる理由だと思います。
肩を揉んでも変わらないのは、努力が足りないからではありません。
見ている場所が、ずれているだけです。
少し踏み込んだ言い方をすれば、肩こりの多くは「肩以外の場所にある問題が、肩に集まっている状態」です。
もちろん全員に当てはまるとは言いません。でも30年の現場で、このパターンが圧倒的に多かった。
そのことを、この記事を通じて正直にお伝えしたいと思います。
肩こりは「肩の問題」ではない
整骨院で「肩が凝ってますか?」と聞かれて、黙ってうなずく。
肩が痛い。だから肩を揉む。
これはとても自然な発想です。
でも、その発想の中に、変わらない理由が隠れているんです。
肩の筋肉が固まるのには、理由があります。
肩の上流に、首と鎖骨がある。
この2つが動かなくなると、肩が代わりに頑張るしかなくなります。
鎖骨は、腕と体幹をつなぐ唯一の骨です。
この骨が自由に動かないと、肩甲骨が固定されます。
肩甲骨が動かなければ、肩の筋肉に負担が集中する。
肩こりは肩の結果であって、原因ではありません。
上流は首と鎖骨にある。そこを見ずに肩だけほぐし続けても、翌日には戻ってくるわけです。
30年以上の現場で、この「上流と出口の取り違え」が変わらない理由の大半だということを、繰り返し確認してきました。
肩を揉んで一時的に楽になるのは、出口を一瞬だけ掃除しているからです。
でも源流からのズレが止まっていない限り、また詰まります。
…本当にこれだけ?
筋骨格のこわばりを、PNFCはこう見ている
自力でほぐそうとしても、なぜ届かないのか
「ストレッチを毎日やっています」という方が来院されます。
頑張っているのに変わらない。その理由は、頑張り方の問題ではありません。
ご自身でほぐそうとするとき、次の3つが同時に揃わなければなりません。
3つの条件が揃わないと、連鎖はほどけない
① 呼吸が先に通っていること
横隔膜が動かない状態でいくら肩をほぐしても、深層の筋肉に届きません。
呼吸が浅いまま関節を動かすと、表層の筋肉だけが動いて終わります。
② 上流の連鎖順序を知っていること
首→鎖骨→肩甲骨という上流から下流への順番を守らないと、
ほどいた関節がすぐに代償パターンに引き戻されます。
③ ズレを感知できていること
代償動作が「正解」として固定されると、どこが本当にズレているか自分では判断できなくなります。
こわばりを感じている場所が、出所とは別の場所であることが多いんです。
この3つが同時に揃わなければ、肩をいくらほぐしても翌日には戻ります。
それは意志の問題でも、年齢の問題でもありません。
構造的に、自力では届かない場所があるんです。
「もうこれ以上変わらないのかもしれない」と思ったとしたら、
その心細さは当然です。
でも変わらなかったのは、見ていた場所が出口だったからです。
源流に手がつくと、身体は確実に応えます。
鎖骨が動きはじめると、朝が変わる
朝、上着に腕を通すとき。
いつもは引っかかる感じがあったのに、するっと通る。
鎖骨の動きが戻ってくると、こういう変化が起きます。
肩甲骨が自由になると、腕全体の重さが分散される。
どこか一箇所に負担が集中しなくなります。
面白いのは、首と鎖骨に働きかけると
肩だけでなく呼吸が変わることです。
鎖骨の下には呼吸に関わる筋肉がある。
ここが動くようになると、胸郭が広がりやすくなります。
夕方、デスクから立ち上がったとき。
肩が重くない。頭がすっきりしている。
鎖骨の動きが戻ると、酸素の供給が変わり、午後の疲れ方が違ってきます。
PNFCの現場では、50代の方で腕が耳の横まで上がらなかった方が、連鎖を整えることで戻っていった、という変化を何度も見てきました。
「どうしてこんなことが」とおっしゃることが多いですが、
不思議でも何でもないんです。
出口ではなく源流に、ようやく手が届いたということです。
肩は「揉む対象」ではなく、身体中のズレが集まる出口です。
呼吸・骨盤・足元のどこかに詰まりがあれば、それが最終的に肩首という出口に集まる。
これが、PNFCが30年の現場で確かめてきた肩こりの構造です。
FOR / この記事が向いている人
向いている方
- ✓ストレッチや運動を続けても、同じ場所が固まり戻ってくる
- ✓整体に通っても、しばらくすると元に戻る
- ✓朝の起き上がりに違和感がある
- ✓痛みの場所ではなく「なぜ起きるか」を知りたい
- ✓鍛えるのではなく、本来の動きを取り戻したい
今は別の道が合う方
- —整体や施術で、すでに楽になっている時期にある
- —強い運動でガッツリ追い込みたい
- —即効性の処方箋だけを探している
PREVIEW / ここから先で扱うこと
- ●原始姿勢反射と深層筋の眠り、いまの痛みがどこから始まっているか
- ●関節を伸ばすのではなく小さく回す、その意味と効き方
- ●代償動作が固定される仕組みと、ほどいていく順番
- ●朝の起き上がりの違和感が消えていく、そのプロセス
- ●自分の軸ズレを、朝の身体感覚から自分で読めるようになる
Q&A / 読みはじめる前に
Q. 運動が苦手でも、続けられますか?
続けられます。鍛えることが前提ではなく、本来の動きを思い出すことが前提です。激しい運動は出てきません。日常の合間に取り入れられる範囲で組まれています。
Q. 年齢が上がるにつれて、変わりにくくなるのでしょうか?
身体は何歳からでも応えてくれます。30年以上の現場で、いちばん早く変化に気づくのは、むしろ長く諦めてきた方々でした。年齢は、変わらない理由にはなりません。
Q. 読んだあと、すぐに変化を感じられますか?
早い方は読んだその日のうちに、身体のどこかが軽くなるのを感じます。順番の通りに辿っていただければ、応えてくれる方が多いです。
ここから先に、もう一段深い話があります。
首→鎖骨→肩甲骨→肩。連鎖を順に追う
電車でつり革を掴んでいるとき、
腕を上げっぱなしが辛くなってきた。
以前はこんなことなかったのに。
この変化の裏には、連鎖があります。
肩こりという結果に至るまでの、いくつかの段階です。
ご自身の身体で何が起きているかを、一緒に辿ってみてください。
最初に動きが止まるのは、首の前後のバランスです。
首の前側には胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)という大きな筋肉があります。
耳の後ろから鎖骨に向かって斜めに走っている筋肉です。
スマホを見るとき、頭が前に出ますよね。
そのとき、この筋肉がずっと縮んだままになります。
首の前が縮むと、後ろの筋肉が引っ張られます。
後頭部から背中にかけての筋肉が、常に張った状態になる。
これが首こりの始まりです。
ここで見落としがちなのが、鎖骨です。
鎖骨は体の前面にある、横に長い骨です。
肩甲骨と胸骨をつないでいます。
腕と体幹の接点になっている唯一の骨です。
胸鎖乳突筋が硬くなると、その付着部である鎖骨の動きが制限されます。
鎖骨の下にある鎖骨下筋も連動して固まる。
すると鎖骨が「動かない棒」のようになります。
気がつくと、腕を回すとき肩の付け根で「ゴリッ」と音がする。
あの音は、鎖骨の動きが止まっているサインです。
鎖骨が動かないと、肩甲骨と胸郭の距離が詰まります。
肩甲骨は本来、肋骨の上を滑るように動く骨です。
でも胸郭にべったり張りついてしまうと、肩の動きが制限されます。
PNFCでは「肩甲骨と胸郭の間を空けてあげる」ことを大事にしています。
この距離が確保できると、肩は本来の動きを取り戻します。
さらに、鎖骨と肋骨の間には気道のポイントがあります。
胸骨と鎖骨の分かれ目にあるペコンとへこんだ場所です。
ここが詰まると呼吸が浅くなる。
呼吸が浅くなると、酸素の供給が追いつかなくなります。
首の前後バランスが崩れる
鎖骨の動きが止まる
肩甲骨が胸郭に張りつく
呼吸が浅くなる
肩を揉むのは、STEP 5の結果に対するアプローチです。
上流のSTEP 1から整えないと、また戻ってしまう。
ここが一番大事なところだと思います。
こわばりの悪循環
①
こわばる
②
別の筋を使う
④
全体が固まる
③
そこも疲れる
↻ どこか一点を変えると、ループ全体がほどけはじめます。
肩こりは肩だけでは終わらない
最近、鏡を見たとき左右の肩の高さが違うことに気づいた。
写真を撮ると、いつも同じ方向に首が傾いている。
肩こりが慢性化すると、身体の他の場所にも影響が出ます。
1つの原因が、いくつもの方向に波及していきます。
鎖骨の機能低下
呼吸への波及が、ここでは一番見落とされやすいところです。
鎖骨と肋骨の間が詰まると、肋間筋(ろっかんきん)が動きにくくなります。
肋間筋は肋骨と肋骨の間にある小さな筋肉で、呼吸のたびに胸を広げる役割があります。
ここが固まると、深い呼吸ができなくなる。
酸素が足りなくなると、なんとなく頭がぼんやりする。
集中力が落ちる。疲れやすくなる。
肩こりから始まったはずなのに、いつの間にか全身の不調になっている。
自律神経への影響もあります。
首の深いところには迷走神経が通っています。
首の前側の筋肉が緊張し続けると、この神経に圧がかかる。
副交感神経が働きにくくなり、身体が「緩んでいい」と感じにくくなります。
寝つきが悪い。朝スッキリしない。
肩こりとは関係なさそうに見えますが、上流をたどると同じところに行きつくことがあります。
この一段奥にあたる話は、別の記事でゆっくり扱っています。
≫ 朝、腰に手を当てて起き上がる日が増えていませんか
肩こりと季節。五行から読む
冬になると肩が重くなる。
春先に頭痛が増える。
なんとなくそう感じている方は多いと思います。
東洋医学の五行で見ると、肩こりは通年の不調ですが、
季節ごとに悪化のパターンが変わります。
冬は腎の季節です。
冷えが体の深部に入ると、血の巡りが落ちます。
血流が落ちると筋肉が固まりやすくなる。
首と肩の筋肉は特に影響を受けます。
春は肝の季節です。
肝気が上に昇ろうとする時期で、首や肩に気が集まりやすい。
イライラしやすくなったり、首の横が張ったりするのは
この季節特有のパターンです。
秋は肺の季節。
呼吸が浅くなりやすい時期です。
肋間筋が動かないと胸郭が狭くなり、肩甲骨の動きがさらに悪くなります。
要は、肩こりは年中ありますが、季節ごとに入り口が違う。
冬は冷えから、春は肝気の上昇から、秋は呼吸から。
同じ「肩が重い」でも、身体の中で起きていることが違います。
この一段奥にあたる話は、別の記事でゆっくり扱っています。
≫ 深く息を吸おうとして、途中で止まる。その理由を知りたい方へ
前の季節の過ごし方が、次の季節の身体をつくる
食卓で肩と首をほぐす
生姜、ねぎ、根菜。
身体を温める食材を選ぼうとする感覚は、身体が何かを知っているからだと思います。
「肩こりに食養?」と感じる方もいると思います。
でも、肩の上流にある血の巡りを支えているのは食です。
食が整わないと、巡りが追いつかない。
五行の考え方では、臓器ごとに相性のいい食材があります。
肩こりと関わりが深いのは、肝・腎・肺の3つです。
血の巡りがキーワードです。
肩こりの背景には血流の低下がある。
ネギや玉ねぎは血を巡らせる食材として昔から使われています。
冬は根のものが大事です。
生姜、ごぼう、にんじん、こんにゃく。
土の中で育ったものは身体を温めてくれます。
こんにゃく、にんじん、ごぼうを鶏と一緒に煮て、最後に豆腐を加える。
こういう一杯が、肩を揉むよりも体を温めてくれることがあります。
とはいえ、食だけで肩こりが全部解決するわけではありません。
食は巡りの土台を整えるもの。
その上で、動きの面からもアプローチする必要があります。
深層を覚ます順番を、ご一緒に辿る
STEP 01 起こす
深層に届く呼吸を、ひとつ取り戻す
激しい運動の前に、横隔膜の動きを取り戻す。眠っていた深層筋に「これから動くよ」と合図を送る段階です。
STEP 02 ほどく
こわばっている関節を、小さく回す
大きく伸ばすのではなく、小さく回す。可動域を広げるのではなく、軸のズレを少しずつ整えていきます。
STEP 03 巡らせる
整えた身体を、自分のリズムで動かす
深層が起きて、関節がほどけたあとなら、ふだんの動きそのものが養生になります。順番を守ることが、いちばんの近道です。
起こす / ほどく / 巡らせる ── この順番が逆になると、せっかくの動きが届きません。
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概念図・PNFC独自の見立て
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