眠れない夜は、心と脾が訴えている
この記事を書いた人
高田 一壽
たかだ かずひさ
- 役職
- PNFCメソッド 開発者
株式会社ピーエヌエフシーテック 代表 - 臨床歴
- 30年以上
- 施術実績
- 月間200名以上
- 教育
- 療術学院・競輪学校等の講師も実施経験
- 指導実績
- 全国の障害者施設・高齢者施設・スポーツ団体
- メディア
- 大手企業TVCM出演、各種スポーツ団体との契約指導
長年の現場経験から体系化されたPNFCは、「鍛える」のではなく 「本来の機能を取り戻す」 コンディショニング法として確立されました。
この一段奥にあたる話は、別の記事でゆっくり扱っています。
≫ 深く息を吸おうとして、途中で止まることはありませんか
眠れない夜は、心と脾が訴えている
布団に入ってから、30分が長い
疲れているのに、眠れない。
布団に入ると、頭の中でいろいろなことが回り始める。明日の段取り。今日やり残したこと。特に意味のない映像が浮かんでは消える。
スマホを置いて、目を閉じる。まぶたの裏がなんだか明るい。30分、40分と過ぎていく。それが分かった瞬間に、もう明日の朝のことを考え始めている。また同じ朝が来る、と先回りで諦めている自分に気づく。
眠れない夜の最も重い部分は、眠れないこと自体ではなく、その諦めに気づく時刻です。夜中の2時や3時に目が覚めて、暗い天井を見上げながら、「また眠れなかった」と確認する、あの感覚。
朝、起き上がると身体がだるい。肩が張っている。後頭部の付け根あたりがずんと重い。胃のあたりも落ち着かない。朝ごはんが食べたくない、という方も多いです。
毎年同じ不調が夏になると繰り返す。秋口になっても連鎖が止まらない。なぜ頑張っても戻ってしまうのか分からない…そんな感覚が続いている方は、これは自分の話だ、と感じている方が多いです。この記事は、そのための記事です。
6月から8月にかけて、そんな夜を過ごしている方は、本当に多いです。
「もう少し涼しくなれば眠れるだろう」と思っていても、秋口になっても変わらない。心療内科で処方された薬を飲んでいるけれど、根本的には変わっていない。そういう方ほど、眠れない理由を脳に探しがちです。ストレス、考えすぎ、神経質な性格。
以前はPNFCの現場でも、「脳かメンタルの問題」として長く向き合ってきた方を、たくさん見てきました。今は、その見立てが変わっています。眠れない夜の起点は、脳ではなく臓腑にあります。
PNFCの臨床現場で30年以上向き合ってきた正直な印象を言うと、不眠を「脳だけの問題」にする見方には、ずっと違和感があります。心と脾を見ずに眠りを取り戻した方を、ほとんど見たことがないからです。
月間200名以上の施術の中で、
不眠を訴える女性の多くに、胃の重さ・肌のくすみ・月経の乱れが同時に出ていました。
別々の病院で別々の診断をもらっていても、元をたどれば一本の線でつながっています。
では、その「一本の線」とは何なのか。そこから見ていきます。
眠れないのは、脳の問題ではありません
不眠というと、メンタルの問題だと思われがちです。
リラックスしなさい。寝る前にスマホを見るな。ホットミルクを飲みなさい。どれも間違いとは言いませんが、それで眠れるようになった方は、ほとんどいません。「リラックスしなさい」という言葉自体が、すでに緊張を生んでいることもある…。
「もう慣れてしまいました」と言う方もいます。でもそれは、慣れているのではなく、疲れきって感じなくなっているだけのことが多いです。眠れない夜を何百回と過ごすうちに、訴える気力すら薄れていく。これは、正直に言うと、かなり消耗した状態です。
東洋医学では、不眠をまったく違う角度から見ます。
心と脾。この二つの臓器の状態を見るのです。
ここでいう「心」は、感情の「こころ」ではありません。五臓の一つ、心臓系のことです。そして五臓の中で、心だけが「体」を持たない。他の臓器には、肝体・脾体・肺体・腎体がある。心だけ、ない。
体を持たないということは、実体のない司令塔だということです。心は精神と神経そのものを司っています。だから心のバランスが崩れると、精神も神経も「自分でコントロールする」ことができなくなる。意志の力でリラックスしようとしても届かないのは、そもそも心の問題が意志の外にあるからです。
血が足りなければ、心は即座に揺れます。実体がないから、血という土台がなければ立っていられない。そして血をつくる材料を供給しているのが、脾(消化器系)です。
脾が弱ると、食べたものから血の材料をつくれない。血が足りなければ、心を養えない。心が養われなければ、精神が落ち着かない。布団の中で目を閉じても、意識が浮いたままになる。これは意志の問題ではなく、材料が届いていない問題です。
これが、「不眠=脳の問題」ではなく「不眠=臓腑の連動の問題」という見立ての根拠です。
どれだけ深呼吸しても、どれだけ照明を暗くしても、血の材料が足りない状態では、心は静まりません。整えようとする前に、何が枯れているかを見なければならない。
ここに、もう一つの構造が重なります。心と脾は、単独では動きません。さらに三焦・子宮という臓腑が加わって、はじめて眠りの条件が揃うのです。この「条件の同時性」こそが、自分一人ではなかなかたどり着けない場所です。
「体質だから」「年齢のせいだから」と思ってきた方が多いです。でも、体質ではありません。臓腑の連動が外れているだけです。外れたものは、取り戻せます。
…ここに脾の問題が絡んできます
そしてもう一つ、脾。脾は消化を司り、血をつくる力を支えています。脾が弱ると、血をつくれない。血が足りなければ、心を養えない。心が養われなければ、精神が落ち着かない。
この構造が見えると、眠れない理由が、まったく違って見えてきます。
21時以降に、身体が変わる感覚
21時を過ぎたあたりから、身体がすっと落ち着いてくる。
後頭部の付け根がほぐれる感覚。胃の上あたりが静かになってくる。瞼が自然に重くなる、その手前の身体の手応え。布団に入ると、数分で意識が遠のいていく。
夜中に目が覚めることもない。朝、身体が自然に軽く起き上がる。頭がすっきりしている。肩のあたりが柔らかい。胃のあたりも穏やかで、朝ごはんがちゃんと食べたくなる。
「よく寝た」という感覚。そうですね、もうずいぶん長いこと忘れています、という方がとても多いです。まだ言葉にできていない感覚です。言語化しにくいものです。でも身体が軽い朝というものが、かつてあったのです。長い不眠の前には、そういう朝がありました。
これは睡眠薬の話でも、特別な枕の話でもありません。心と脾が整ったとき、身体は自然に眠りに入ります。意志の力ではなく、臓器が「もう大丈夫」と感じたときに、眠りはやってくるんです。
この感覚を取り戻すために必要なのは、「整える」のではなく「揺れる幅を取り戻す」ことです。身体は本来、昼の交感神経と夜の副交感神経の間を、自然に行き来できるようになっている。その往復の幅が、少しずつ狭くなってきたのが、慢性的な不眠の正体です。
PNFCの現場での見立ては、心・脾・三焦・子宮という複数の臓腑の連動を、同時に整えることを前提にしています。どれか一つだけを切り取っても、眠りは戻りません。
これら四つの条件が同時に揃わなければ、眠りは戻らない。そしてご自分でこの順番を組み立てるのは、正直に言うとかなり難しい作業です。心細くなるのも、当然です。
なぜ21時という時間が関係するのか。なぜ夏のこの時期の不眠が特に深刻なのか。心と脾の「母と子」の関係が崩れるとき、身体に出る順番はどうなるのか。その構造を、この後丁寧に読み解いていきます。
FOR / この記事が向いている人
向いている方
- ✓眠れない、疲れがとれないが、原因が見えない
- ✓検査では異常なしと言われたが、不調はある
- ✓整え方を、感覚ではなく構造で知りたい
- ✓呼吸の浅さや胸の詰まりを感じる
- ✓心と身体のつながりを構造的に理解したい
今は別の道が合う方
- —リラックス法や瞑想で、十分整っている
- —即効性のある方法だけを探している
- —薬や医療的処置で完全に解決したい
PREVIEW / ここから先で扱うこと
- ●呼吸の浅さから交感神経優位へ、揺れが増幅する経路の全貌
- ●心と腎のバランスが崩れたときに身体に出る順番
- ●「整える」のではなく「揺れる幅を取り戻す」という新しい発想
- ●眠りの深さが戻ってくる、その身体的なプロセス
- ●朝・昼・夜の身体感覚から、自分の揺れを自分で読めるようになる
Q&A / 読みはじめる前に
Q. 運動が苦手でも、続けられますか?
続けられます。鍛えることが前提ではなく、本来の動きを思い出すことが前提です。激しい運動は出てきません。日常の合間に取り入れられる範囲で組まれています。
Q. 年齢が重なるほど、眠りは戻りにくくなりますか?
年齢の問題ではなく、組み立ての問題です。30年以上の現場で、いちばん早く変化に気づくのは、むしろ長く諦めてきた方々でした。心と脾の連動が外れているのが原因であって、加齢で壊れているわけではありません。
Q. 読んだあと、すぐに変化を感じられますか?
早い方は読んだその日のうちに、身体のどこかが軽くなるのを感じます。順番の通りに辿っていただければ、応えてくれる方が多いです。
この続きは有料パート
概念図・PNFC独自の見立て
~ この続きをみるには ~
