自律神経・呼吸

迷走神経という、もう一つの呼吸の道

KAZU@FURYU
* * *

この記事を書いた人

高田一壽

高田 一壽

たかだ かずひさ

役職
PNFCメソッド 開発者
株式会社ピーエヌエフシーテック 代表
臨床歴
30年以上
施術実績
月間200名以上
教育
療術学院・競輪学校等の講師も実施経験
指導実績
全国の障害者施設・高齢者施設・スポーツ団体
メディア
大手企業TVCM出演、各種スポーツ団体との契約指導

長年の現場経験から体系化されたPNFCは、「鍛える」のではなく 「本来の機能を取り戻す」 コンディショニング法として確立されました。

深呼吸をしても、なぜか身体が休まらない

息を吸う。ゆっくり吐く。
それだけで副交感神経が優位になる。
一度は耳にしたことのある話です。


でも実際にやってみると、
意外と身体が楽にならない。


夜、布団に入った瞬間から
肩のあたりに緊張が残っている。
電気を消しても、目の奥がまだ明るいままでいる感覚。
朝起きても、寝た気がしない。


呼吸法をちゃんとやっているのに、
なんで効かないんだろう


そう感じている方は、少なくありません。
PNFCの臨床現場でも、こういった訴えを持つ方が一定数います。
これは、以前は「呼吸法が合っていないから」と考えられていました。でも今は違います。
問題は呼吸の技術ではなく、呼吸が届くための通り道の方にある、という見方に変わってきています。


踏み込んだ言い方をすれば、
呼吸法だけを繰り返しても変わらない方には、変わらない理由が先にあるんです。
これは責める話ではありません。
ただ、原因の場所が違っていた、ということです。


呼吸法そのものが間違っているわけではない。
ただ、呼吸が通る「道」のほうに
問題があるとしたら。


そこから考えていきます。






呼吸が効かないのは、喉と胸の「通り道」が詰まっているから

これは断定が強すぎる言い方だと分かっています。
でも、現場で30年以上みてきて、
正直に言うと、呼吸法を教えても変わらない方が一定数いる
という事実が長年、頭の隅に引っかかっていたんです。


もちろん全員がそうではありません。
呼吸法だけで改善する方もいます。
ただ、変わらない方には、変わらない理由がある
その理由を無視したまま続けても、負荷だけが積み重なる。
そこが気になっていたんですよね。


呼吸法そのものは正しい。
腹式呼吸、4-7-8呼吸、鼻呼吸。
どれも効果のある手段です。


ただ、効かない人がいる理由は、技術の問題ではない。


仕事帰り、首から肩にかけてに石板を乗せたような重さを感じる日がありませんか。
顎が前に出て、首が短く見える。
気づいたら肩が耳に近い位置にある。
あの姿勢のとき、身体の中では何が起きているか。


呼吸が身体に届くためには、
空気が通る気道だけでなく、
「神経が通る道」も開いている必要があります。


その神経の道が、迷走神経です。


迷走神経は脳幹から出て、
喉の側面を通り、鎖骨をくぐり、
胸を下って心臓・肺・胃・腸まで続く長い神経です。
「副交感神経の本線」といってもいい。


だから「迷走」という名前がついている。
身体の中を、迷いながら走っている神経。


この本線に、
ゲート(関所)がある。


喉の側面(胸鎖乳突筋・斜角筋に挟まれたあたり)と、
鎖骨の内端(胸骨の両脇にある小さな隙間)。
この2か所が硬くなっていると、
どれだけ深呼吸しても信号が内臓まで届かない。


呼吸の「吸い方」ではなく、
神経の「通り道」のほうが先なんですよね。


さらに言うと、
この「通り道が詰まる」のには、
3つの段階がある。


① 呼吸が浅くなる(寒くなって首をすくめた、デスクワークで前傾が続いた)
② 姿勢と筋膜が固まっていく(首の可動域が狭まり、鎖骨のあたりが硬くなる)
③ 迷走神経への圧迫が慢性化する(ゲートが閉じたまま、信号が届かなくなる)


この順番で詰まっていく。
だから、呼吸法だけを繰り返しても、
②と③が先に残っている限り、
通り道は閉じたままです。


「問題は呼吸の深さではなく、
呼吸の通る道が開いているかどうか」
この視点が変わると、
何から始めればいいかも変わります。


深呼吸する
喉・胸が硬い
信号が届かない

…呼吸法の問題? それとも?




* * *

自律神経の揺れを、PNFCはこう見ている

第1層 表に現れている症状 不眠 / 動悸 / めまい / 胸の詰まり / 疲れがとれない — ここを揉んでも、しばらくすると戻ってくる この奥に 第2層 巡りと呼吸の停滞 血の流れが鈍る / 水の巡りが滞る / 呼吸が浅くなる / 自律神経の揺れ — 第1層の症状を作り出している、ひとつ手前の流れ さらに奥に 第3層 / 根 五臓の循環と季節のリズム 前の季節の過ごし方 / 五臓の連鎖 / 使われ方のズレ / 深層の眠り — ここに手がつくと、上の二層が一緒にほどけはじめる

ゲートが開くと、身体はこう変わる

朝、目が覚めた瞬間に
あ、今日はよく寝たな」と思える。


喉のあたりが、固まっていたものがほどけたように緩んでいる。
声がすっと出る。
肩に力が入っていないのに、
姿勢がまっすぐ保てている。


朝、首を左右に向けたとき、ゴリゴリした感じがない。鎖骨のあたりが昨日より軽い。湯船に肩までつかったとき、鎖骨の下がじんわりほどける感覚がある。


これが、迷走神経が通っている状態です。
これを「戻ってきた」と感じる方がいます。
正確には、最初からそこにあったものが、ゲートを閉じることで届かなくなっていただけなんです。


逆に、こんな感覚がある方は、
ゲートが閉じているサインです。


電気を消した部屋でも、まだ目の奥が明るいままでいる感覚。
布団に入った瞬間、まだ仕事の続きを考えている自分。
身体は横になっているのに、頭だけまだ起きている。
これが交感神経が落とせない状態です。


夜中の静かな部屋で冷蔵庫のコンプレッサーの音が聞こえてくる、
あの静けさ。
布団の中でそれが感じられる夜が、
迷走神経が通っている夜です。


ゲートの位置。
閉じる原因。
そして開け方の順序。

この記事では、そこを読み解いていきます。



FOR / この記事が向いている人

向いている方

  • 眠れない、疲れがとれないが、原因が見えない
  • 検査では異常なしと言われたが、不調はある
  • 整え方を、感覚ではなく構造で知りたい
  • 呼吸の浅さや胸の詰まりを感じる
  • 心と身体のつながりを構造的に理解したい

今は別の道が合う方

  • リラックス法や瞑想で、十分整っている
  • 即効性のある方法だけを探している
  • 薬や医療的処置で完全に解決したい

PREVIEW / ここから先で扱うこと

  • 呼吸の浅さから交感神経優位へ、揺れが増幅する経路の全貌
  • 心と腎のバランスが崩れたときに身体に出る順番
  • 「整える」のではなく「揺れる幅を取り戻す」という新しい発想
  • 眠りの深さが戻ってくる、その身体的なプロセス
  • 朝・昼・夜の身体感覚から、自分の揺れを自分で読めるようになる

Q&A / 読みはじめる前に

Q. 運動が苦手でも、続けられますか?

続けられます。鍛えることが前提ではなく、本来の動きを思い出すことが前提です。激しい運動は出てきません。日常の合間に取り入れられる範囲で組まれています。

Q. 年齢が進んでいると、もう変わらないのでしょうか?

身体は何歳からでも応えてくれます。30年以上の現場で、いちばん早く変化に気づくのは、むしろ長く諦めてきた方々でした。年齢は理由になりません。

Q. 読んだあと、すぐに変化を感じられますか?

早い方は読んだその日のうちに、身体のどこかが軽くなるのを感じます。順番の通りに辿っていただければ、応えてくれる方が多いです。

ここから先に、もう一段深い話があります。

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概念図・PNFC独自の見立て

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ABOUT ME
高田一壽
高田一壽
PNFC TEC JAPAN 会長
30年以上にわたり、月200名を超える人々の身体と向き合ってきた、日本でも稀有なコンディショニングのスペシャリストである。 東京療術学院で講師として専門家育成に携わり、全国の障害者施設・高齢者施設・スポーツ団体での指導を通じて、幅広い臨床経験を培ってきた。 大手企業のTVCM出演、各種スポーツ団体との契約指導、全国から寄せられる多数のセミナー依頼など、多方面で活動実績を積み重ねている。 その長年の現場経験から体系化されたPNFCは、運動能力の改善と身体の再構築を可能にするメソッドとして確立され、現在も全国からの依頼が絶えることはない。
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